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山の郵便配達 

20080716a
監督:フォ・ジェンチイ
『那山 那人 那狗/Postmen in The Mountains』
(1999年 中国)


中国の山間地帯に向かう郵便配達員の父と息子と“次男坊”。
山を歩くにしては柔(やわ)じゃないかと思わせる布製のズック。父親は長いこと、そんな履き物で山の村々を行き来してきたらしい。慣れた足取りに合わせて、父の相棒犬“次男坊”が、あとを追ったり先導したりして付いて行く。
一日に約40キロ。三日に及ぶ二人と一匹の道のりは、父にとっては仕事納め、息子にとっては仕事始めの旅になる。

<どこであろうと、知的に暮らす人がいる>
町で働くこともできるのに……。
息子が父親と同じ道を選んでよいものなのか、胸中ちょっぴり心配しながら見送る母。
その母とともに父を見送り、帰りを待つ日々を過ごした息子は、いつからか父親に距離を置くようになっていた。

一見、単調そうな山の郵便配達員。その人生に何があるだろう。
夢や希望はあるのだろうか?
若い息子は、地味な仕事がつまらなくなったりはしないだろうか?

自分の世界とかけ離れた風景に、下世話な思いがちらっと過ぎる(よぎる)。
が、そんな厭らしい思いを浄化してしまうほどに、草の緑、田んぼの緑、山の緑の煙るような色彩が淡く優しく美しい。

息子への引き継ぎの旅の中で、ときおり回想する父。
若かった妻と出逢った日のこと。
恋したとき、愛しかったとき、息子が生まれたとき。
そして、多くは一緒に過ごせなかった幼い息子との思い出。
山里であろうと町であろうと、人生にはちゃんと出会いがあり、営みと育みの物語がある。
親子とともに配達ルートを進むにつれ、素朴で真っ当な人生の歩みに、人への愛しさが点されていく。

山、山、山、に囲まれた里の民家で息子が呟いた。
「昔からここに住んで、山以外何もない人たちだ」

かぶりは振らず、ぽつりぽつりと応える父。
「頭でものを考えてる。
 苦しみがあれば考えることで乗り越える。
 考えることなしに人生の喜びはない」

どこぞで仕入れた借りものの説教と違い、父の言葉に押し付けがましさはない。
安心と豊かさを求めてやまず、教養があっても悩める世の中がある一方で、自然の他に何も無く見える辺境の地が、かえって人の知性に磨きをかけるのか。
山里であろうとどこであろうと、知的に生きようとする者に知性は宿るのだ。
若い息子の台詞に通じる自分の驕り(おごり)を諭された。

郵便配達の道のりも終わりに近づき、橋で休憩する父と息子と、犬の“次男坊”。
突然の風に郵便物が飛ばされる。
仕事に慣れかけた息子の迂闊さが招くハプニング。
足を痛めているはずの父が飛脚のごとく走り出す。
おそらくあの父にも、長い配達員生活で、大事な郵便物を危険にさらす出来事があったに違いない。
郵便物どころか、命の危機だってあったのだ。

現在55の少数民族が在する中国には、今でも辺境の農村地域や山岳地帯をルートとする郵便配達人が実在するそうだ。
私の人生が経験しそうにない山の暮らし。
山には山に暮らす人がいて、海には海の暮らしがあり、町には町の、東京には東京の暮らしがある。
それぞれが生まれ落ち、選んだ場所の暮し向きが違おうと、考えることなしに暮らす人生に喜びはないことに違いはないのだ。

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